学生レポート

オーストラリア教育研修

オーストラリア教育研修 事後レポート

「児童英語コース 2年」

 今回、日本での教育実習前かつ英語で小学生に教育実習を行うことができるこの機会に挑戦したいという漠然とした願望だけを持ち、英語の力にも授業を構成する力にも自信がない中、本研修に参加した。日本とは全く異なる社会や文化、学校の様子に刺激を受け、自身の見方や価値観が大きく変化したことが多くあった。本レポートでは、オーストラリアの教育と学校や児童の様子、教育実習について、異文化に触れて感じたことや自身の語学力について記していきたい。

1.オーストラリアの教育と児童や教師の様子

第3週目に訪問したローズパーク小学校とコロマンデルバレー小学校はIB教育を推進している小学校だった。IBは多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探求心、知識、思いやりに富んだ若者の育成と目的としている(文部科学省,2020)。多文化社会であるオーストラリアだからこそ、児童自身が身近に捉え、ごく自然に考えていけることだと感じた。小学生段階の子どもたちが世界的な広い視野を持って考えていくためにはまず、児童自らが自分自身のことを理解し、自分自身で解決に向けた手立てを考えて実行していくことが大切である。ローズパークやコロマンデルバレーでは児童が自己評価をしたり気持ちを発信したりする機会が多かった。授業の内容のみにとどまらず、教室のつくりや掲示物一つひとつに工夫が見られた。また、日本とは異なり、国や州政府から指定された共通の教科書がない。そのため、担当教員が教材を用意して授業を構成していた。日本では教科書に沿って授業を画一的に行い、教育水準を保とうとする。一方オーストラリアでは、教師個々の高い教材研修能力が必要とされるとともに、伝えたいことや意思を反映しやすく、教師や児童の自由な発想を十分に生かすことができる。制限や強制がないために児童に加えて教師の能力開発や伸びが期待でき、結果的に探究心を育てたり高度な知識を求めたりすることにつながる。学校、授業すべてを通してIBの子どもたちを育てていこうとする風潮が見られた。

また、どの学校にも教育の現場に自由な雰囲気があり、児童も教師も皆生き生きとしている印象を受けた。教室内を自由に動き回り好きな場所で学習できる環境があり、教室というものの在り方を考えさせられた。教室内にソファーやラグ、リビングテーブルがあり、日本の教室とのあまりの違いに衝撃を受けたが、子どもたちからは笑顔が溢れ、友達と一緒に取り組む姿を見ることができた。教材の準備で忙しいはずの教師にもどことなく余裕が見られ、休憩の時間にはコーヒーやお菓子を片手に数人でパズルをしたりプライベートな会話をしたりする姿が見られた。学校という場でありながらも、学習する環境、働く環境にメリハリがあり、価値観や文化の違いを実感した。

そして、自由な雰囲気が全体にあるからこそ、教師の個性や学校の特徴が児童に表れやすいのだと感じた。私立の小学校では、保護者の教育意識が高く、教員も同学校を卒業した人が多いのだという。しつけが行き届いていて親や教師の文化度も非常に高く、礼儀正しく、しっかりと座って人の話を聞くことのできる児童が多い中でも、自ら日本語で話しかけてきたり積極的にコミュニケーションを図ったりする場面も多かった。一方公立の小学校においても、地域による特色がみられ、全く異なる印象を受けた。学区制ではあるが市街の高級住宅街に住む子どもたちと山間部の農家の子どもとでは育った環境や物事の見方や考え方が異なる。ローズパークの児童たちは男女問わず活発で、授業では疑問に思ったことを積極的に質問したり自身の経験や考えを嬉しそうに話してくれたりした。コロマンデルバレーの児童たちも活発な印象を受けたが、仲間意識が強く、皆で高め合っていこうとする姿勢が見られた。各地域、学校、学年、学級などで様々な違いがあり、それぞれに良さや課題があるのだと改めて感じることができた。しかし、日本のとの大きな違いは明確な基準がないがために格差が生じるということだ。児童自身の力量で自由に学習を進められるということは、力が劣る児童との差が広がるということでもある。教育の機会均等が保障されている中では差というものが大きな問題となると考える。様々なメリットやデメリットを考え、その都度最善を選択していくことが必要だと感じた。

2.教育実習を終えて

今回の授業は『Having fun in Japan』というテーマを掲げ、日本の伝統文化や大都市にとどまらない日本の地方の魅力ある場所について児童に紹介し、日本地図と都道府県名を照らし合わせて授業を進めた。日本に行ってみたと興味を持ってもらうこと、児童一人ひとりが行きたい場所について日本語で言えることを目標とした。ウェストミンスターで1週間、ローズパークで3日間、コロマンデルバレーで2日間の2週間で3年生から7年生までの児童を対象に合計20時間以上の実習をさせていただいた。出発前の授業の組み立てから指導案の作成、模擬授業までを通して、思うように進まず準備が不十分な状態で不安を抱えたまま出発することになった。現地について次の日からはセバトンシニアカレッジのフィリップ校長にオーストラリアの教育制度についてご教授いただいた後、授業を見ていただいて立ち振る舞いや表現の仕方、英語の発音などのご指導をいただいた。「rule」など日本人の発音では児童に伝わりにくい表現の言い回しについてアドバイスをしてくださったり、自身の娘さんの認知度などを基に授業内容を児童がどのくらい理解できるかなどについて教えてくださったりした。セバトンでの経験を生かし、小学校の教育実習に臨むことができた。

ウェストミンスターでは、日本語担当の亀井先生に大変お世話になり、児童の座席配置を考えていただいたりスライドのアドバイスをいただいたりした。はじめの頃は緊張し入念に覚えたはずの英語のスクリプトが途中で飛んでしまったり拙い英語が児童に伝わらなかったりと授業をスムーズに進行できず、悔しい思いをした。準備をしたつもりでも毎日のように宿泊先で仲間と改善を考え、英語のスクリプトを変える必要があり、大変ではあったが、回数を重ねるごとに慣れてきて児童に理解してもらえた時の喜びは大きかった。教室には円卓が並び、児童もとても活発だったため、ローズパークでの実習には苦労を感じることが多かった。児童に飽きさせない工夫、楽しく学び、日本に興味を持ってもらうという大前提を意識しつつ、自身の英語で的確に伝え、必要に応じた指示を出す必要があった。しかし準備していたスライドのアニメーションや画像に児童が夢中になっている姿を見て、言語以外の伝え方があること、表現の仕方の多様性に気付いた。学校や学年、児童は一人ひとり異なり、「今まで」が通用しないこと、児童の実態を自分の目で見極めて適した表現、方法で児童にとって難しいことを理解しやすく、興味を持ってもらえるように楽しく教えていくこと、児童に楽しんでもらうためには教師自身が確かな知識を持ちつつ、授業を楽しむことが大切であると児童に気付かされた。最後のコロマンデルバレーで実習を行う頃には、時間調整のための活動を即時に考え、英語で指示を出すことができ、自身の達成感につなげられたとともに、常に改善を求める姿勢や仲間と協力して創り上げることの重要さを知ることができた。授業を作っていくうえでの入念な準備に加え、より内容が濃くて深いもの、楽しいものとなるように自身の授業についてよく知り、改善を求めて努力していくこと、状況に応じて柔軟に対応していくことを経験することができた。

3.アデレードでの生活と英語

この3週間でオーストラリアの教育や自身の授業のスキルを学び高めるだけでなく、様々な文化や豊かな自然に触れることができた。アデレードでは町を歩く人の人種の多さ、料理や街並みなど至るところで文化の多様性を感じることができた。大都市でない町にもチャイナタウンがあり、移住の人々が営む本格的なイタリアンレストランや韓国料理店、和食店など人種を超えて楽しむことができるため、日本よりも異文化理解が進んでいると感じた。市街地は開発が進み、大きなコンベンションセンターや商業施設が建設されている中でも、少し郊外に出れば野生のコアラを見ることができ、美しいビーチがあったり緑地や川が駅の周辺にあったりと自然の豊かさも感じた。人々の科学技術が進んで文化が発展しても、オーストラリア本来の美しさを守っていこうとする精神に深く感銘を受けた。また、アデレードは高緯度帯であるため、夏の時期の日没は午後8時頃で夕方や夜でも空が明るい。しかし、学校や会社は日本よりも早い時間に終わり、午後5時にはスーパーマーケットや飲食店を除く店は閉店するという状態だった。夜遅くまで部活動をすることも残業をすることもないため、生活全体をとおして忙しさや息苦しさは無く、生活ぶりに余裕やゆとりを感じた。

現地の知り合いのおかげで休日や学校後に買い物や食事を楽しんだりビーチや展望台から夕日を楽しんだりすることもできた。日本人ガイドの新井さんとクリーランド動物園やハーンドルフを訪れて観光を楽しんだり、日曜日には研修を共にした仲間と海にイルカを見に行ったりして楽しい思い出や現地でしかできない経験をすることができた。

また、最後の一週間はホームステイ先で過ごし、短い時間ではあったが人生で初めてのホームステイを経験し、ホストマザーとの思い出をつくることができた。ホストマザーは30代の独身女性で、とても優しく日本人の私を気遣って夕食にそばやご飯を提供してくれた。叔父が前橋に住んでいることもあり、とても日本に興味を持っていて、食事の時や夜の短い時間でもお互いのことを話したり、その日一日の様子を話したりすることができた。拙い英語でも素直に受け止めてくれ、理解しようとしてくれる姿勢に救われることが何度もあった。授業やホームステイを含め、自身の英語の力不足を実感させられることが多かった。伝えたいこと、意図することがあっても、言語の違いで上手く伝えることができず、心から悔しいと感じた。しかし、表現を変えたり、自分の知識を振り絞って伝えたりした結果、考えが通じたときには大きな喜びを感じることができた。英語でコミュニケーションをとることの大切さや楽しさを実感したとともに、英語を楽しく生涯的に学んでいくことについて、これからの社会を生きていく子どもたちに教えていくことの大切さを感じた。

4.おわりに

今回、オーストラリア教育研修に参加できたことを心から嬉しく思う。参加人数が少ないために個々への負担が大きく、仲間と上手く連携を取ることができず戸惑ったり思うように前へ進めず投げ出したくなったりすることもあったが、諦めずに励まし合い最後まで3人でやり遂げられたこと、先生方や先輩方、現地の方々や子どもたちなど多くの人々に支えられて実のある研修にすることができたと改めて実感した。授業ではゲームや活動の部分を担当し、誰よりも臨機応変さを求められ寝られないほど苦労することもあったが、大きなものを得られたと思う。今しかできない経験、そこでしか見ることのできない景色を肌で感じることができた。また、教師になりたいという思いがより一層強まり、これらの経験はこれからの自身につなげていきたい。まだ世界の一部しか見えていないが、身近なことを知り世界を知って広い視野を持って、どのような子どもたちを育てていきたいか、教育がどのようにあるべきかを長い目で見てける教師になりたい。そのためにも、今からできることを一つひとつ考えて着実に前へ進んでいきたい。